恋することを知った恋

「えー」

颯斗は少し残念そうにしながら立ち止まって、あたしのことを見ている。

あたしはそんな颯斗に構わず先に歩き出して、笑顔で振り返ってもう一度手を差し出す。

「早く行こ」

颯斗は小走りしてきてあたしの手を嬉しそうに握る。

こんなんじゃ、麻奈美が寂しがるって思う?

それなら大丈夫。



「杏里―っ!」



後ろから、麻奈美の声がして振り返る。

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