恋することを知った恋

あたしも前を向いたまま頬杖を付いて、話を聞く。

窓から入ってくるそよ風が、生徒の髪の毛を揺らす。

その風景だけがぼんやりとあたしの目に映って、無音の世界にたどり着いたような感覚がする。

ゆっくり、何度か瞬きをする。

――悔しいけど、あの声がずっと残っている。

あたしは何度もその声を追い払っては消し、普通であることに安心感を覚えた。

でも結局はその繰り返し。

何度追い払っても、それは現れる。

考えたくないのに、考えてしまう。

この感情、すごく嫌い。
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