恋することを知った恋
「落ちたよ」
あたしの無音の空間に突如聞こえた言葉に驚いて、思わず姿勢を正した。
「せんせー、教科書落ちたよー」
もう、授業は始まっていた。
風の力で教卓の上から滑り落ちた教科書を、教師が拾う。
そんな教師の姿を見て、生徒たちは笑う。
それからそのまま、授業は再開された。
あたしの記憶は、HRの途中から止まっている。
今まで考えていたことが、嘘なら良かった。
そう思わせること自体が、これは本当のとあたしに強く訴えた。
恋とは、呼びたくない。