恋することを知った恋
でも。
このふやふやした感情を誰かに教えてしまうと、もう後戻りができない気がして。
この感情に、はっきりとした名前をつけられてしまうような気がして。
誰かに聞いて欲しいような、聞いて欲しくないような。
あたしの中の曖昧な気持ちが、またあたしを迷わせる。
少しの迷いが、数秒間の時間と共に空間を巡った。
ゆっくり麻奈美の目を見る。
しっかり目が合って、あたしは少し笑みを浮かべた。
「…さっき麻奈美が湧太先輩に会いに行った時に」
そして、そっと口を開いた。