恋することを知った恋

自分のお気に入りのものに出会えたとき、あたしはいつも胸が高鳴る。

あたしは鏡で何度か自分の姿を確認して、そのピアスをレジに持っていく。

さっきの店員さんと目が合って、笑顔で対応してくれた、その時だった。

「すみません」

男の人の声があたしの横から聞こえて、あたしは思わず横を向いた。

「このネックレス、ピンク色ってありますか?」

その声の主は、細身で長身の爽やかな男の人だった。

あたしと店員さんは目が合っていたものの、その男の人はあたしより先に店員さんに声をかけたから、店員さんはあたしに“少々お待ちください”みたいな表情をして、先にその男の人の要望に応えた。
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