恋することを知った恋

「ピンク色でしたらありますよ、こちらです」

店員さんはその男の人をアクセサリーコーナーまで連れて行った。

あたしはその男の人の後ろ姿を見た。

ちょっと長めの黒髪。

カーキ色のシャツにカジュアルなデニムパンツ、黒いリュックを背負っている。

ちょっと、かっこいい。

不意にそんなことを思ってしまった自分が、なんだか軽い人間に思えて嫌になって、その後ろ姿から目をそらした。

「彼女さんにですか?」

「あ、はい」

笑顔で聞く店員さんに笑顔で答える男の人。
< 9 / 400 >

この作品をシェア

pagetop