続きは、社長室で。〜相愛ゆえに〜
私たちの待つ席でその足を止めた彼は、「お待たせ」と爽やかな声音で微笑んだ。
それから菫に向かって、「いつもありがとう」といつもお礼をする。
「いえ。私が出来るだけ彼女と一緒にいたいだけですから」
「まあ、本質は一緒かな?」
「ええ、そうだと思います」
そう言って笑い合うふたりに、私はいつだって首を傾げてしまう。
周りの人の勘の鋭さや賢さといったものが私にはまるでなくて。悲しいけれど、こればかりは努力で補えるものではないみたい。
「いいのよ。蘭には染まって欲しくないわ」
なんて菫が言うと、拓海まで同意するから、最後は腑に落ちないまま頷いてしまう。
その後、菫の家の迎えもやって来たので、彼に肩を抱かれながらお店をあとにした。
春らしいそよ風の吹く街並みを並んで歩きながらパーキングへと向かう。
彼に誘導されて辿り着いた一台の車に目を見張る。——そこに停められていたのは、艶やかに輝く真っ白なメルセデスだった。
「これって」
ぽつり、と呟きながら彼を見上げると、ブラウンの優しげな瞳でこちらを捉えながら答えてくれた。
「うん、今日納車して貰ったんだ。このシリーズがモデルチェンジするって担当から聞いてたから」