続きは、社長室で。〜相愛ゆえに〜
「蘭が思ってる以上に俺は蘭が好きで仕方ないんだよ」
「ッ、」
そう告げて、フッと一笑した拓海はいつでも感情を隠そうとはしない。
お付き合いを始めた頃は恥ずかしさが付き纏っていたけれど、少しは変われたはず。——今ある想いはその場で伝えなきゃ、と。
それから目の前の大好きな人に縋るように、ギュッと抱きつけば私の背中にも手が回された。
「た、拓海っ、……あり、がとっ」
「うん、やっと会えた。……愛してるよ、なんてひと言じゃ伝えられないけどな」
「わ、たしも……っ」
ふぅ、と静寂に落ちたひとつの嘆息が鼓膜を揺らす。
ふわり、と鼻腔を掠めていくホワイトムスクの香りが安心感をもたらす。
低く甘い声と広い胸で優しく包んでくれるから、拓海の存在を確かめるように縋ってしまうの……。
暫くして私が泣き止むと、誘われるようにして真新しい車に乗り込んだ。
新車特有の匂いが立ち込める車内。ブラックのレザー素材のシートに落ち着くと、視線を感じたので左へと視線を移す。
「今日は楽しかった?」
「うん」と笑顔で答えれば、拓海は穏やかな眼差しで微笑んでくれた。
そのまま見つめ合っていると、徐々に端正な顔が近づいてきて。ドキリ、と鼓動の高ぶりを感じながらそっと目を伏せた。
チュッ、と甘いリップノイズが鳴った直後、柔らかなもので唇を塞がれる。
「んっ……ふぅ、……ンンッ、」
角度を変えながら唇を重ね合う。その最中、侵入して来た舌先が口腔を蠢いていく。
徐々に妖しい水音が鼓膜を揺らし、受け止める私の体温と頬は熱を帯びて止まない。
頭がぼんやりし始めた頃、伸びてきた片腕に少しだけ引き寄せられる。また少し近づき、彼の舌先が深く差し込まれた。
それでもシートを挟んだ中央にある装備に分かたれるようで、少しだけ離れた距離さえもどかしく感じてしまう。