your side
「お茶碗とかコップとか、買ってここに置いてあるからね。」

亜弥が小さな茶箪笥から、コップを取り出した。ついでに来客用のコップも2つ取り出す。ヤカンにお湯を沸かし、紅茶のティーバッグを急須にいれ、お湯を注いだ。

「そろそろ、3人とも帰って来る頃だわ。」

コップに紅茶を注ぐ。
みなみは、申し訳無さそうに体をこわばらせ、
「ありがとう、何から何まで。」
と、言った。
「なぁに。これからは、みんな家族になるんだ。悩んだり、寂しくなったら、誰でもいいから話すんだぞ。泣いてもいいからな。」
達也が穏やかに言う。

「はい、あ、う、うん。」

みなみは泣きそうになった。
賑やかな話し声が近づいてくる。ガチャ。玄関のドアが開いた。みなみは、ハッと振り向いた。

男子が3人、話をぴたっと止め、みなみを見つめる。

「だ、誰?」

胸まで伸ばした、ストレートの黒髪の小柄な少女を、3人は見とれる。

しばらく無言の3人に、亜弥は話し出した。

「3人とも、入って入って!紹介するわね。桜沢みなみって言うの。私の妹みたいな関係よ。」

「はあ。」と、ポカンと口を開けたままの3人。なんでここに居るのと言わんばかりだ。

亜弥は続けた。3人の背後に行き、端から肩に手を起き、

「この子が、拓也。」

拓也は顔を背け、返事もしなかった。

「拓也はね、喧嘩ばーっかりなのよ。」
「うるせーよ…」

小声で拓也は言った。続いて真ん中の男子の肩に手を起き、

「この子が翔(かける)。お調子モノ的な存在ね。」

翔は「はじめまして」と敬礼した。

「この子がね、康二。大人しいけど、芯はしっかりしてる。」

康二は、下向き加減で少し頭を下げた。

みなみは少し頬を赤らめ、
「よろしく。」
と、言った。
「3人はね。施設で育ったんだけど。歳が同じだからって、いっつも3人で行動してたんだって。それを施設の人から聞いて、丁度中学に上がるっていうのもあって、3人とも引き取っちゃおうって。正解だったわ。みんな凄くいい子。」

亜弥は嬉しそうに話した。
みなみは「へえー。」と聴いていた。
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