好きだと気づく30センチ
 その聞こえてくる小さな子供みたいな寝息は、どんな呪文だって敵わないほど私を睡魔の中に引きずり込む。

 目を開けようとしても閉じてくる目蓋。

 隣ですやすや眠るクワガタ。

 あ、もう目が開かない。…だめだ、もう、だめだ。

「永田、村上!!」

 突然呼ばれて一気に目が覚める。

 顔を上げれば怒ったような困ったような表情の先生と、周りからの視線。

 隣ではゆっくりと背伸びをしながら突っ伏していた机から体を起こして欠伸をするクワガタ。

「…ここ、今度のテストで出るからちゃんとノートにとっときなさい」
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