好きだと気づく30センチ
 そうして一限、二限と授業が終わって、お昼前に降っていた雨が止んだ。

 雲の合間から光りが差し込む。

 帰る頃にはすっかり晴れて、道のあちこちにできた水溜まりを避けながら歩く。

 校門の所にある桜はほとんど散って、地面は花弁の絨毯。

 散った後さえ綺麗だな、て思っていた私の後ろで自転車のベルが鳴って、端に寄る。

「ヒヨコ」

 不意をついて聞こえたクワガタの声に顔を上げた。

 ブレーキの音を響かせて、私の隣にあいつが止まった。
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