好きだと気づく30センチ
「後ろ乗ってけよ。家まで送る」

「い、いいよ。歩いても帰れるし」

「だーめ。ヒヨコん家の道なら、もう覚えてるから」

 昨日買い物の帰りに送ってもらって、今日も送らせるなんて、なんだか申し訳ないから遠慮してるのに。

「ヒヨコの歩く速度で帰れば日が暮れて夜になるだろ。だから遠慮なんてしないで、さっさと乗る!」

「……はーい」

 しぶしぶ、といった感じでクワガタの後ろに乗るけど、心の中はすごくドキドキしてて、すぐ側にある背中にクワガタが男の子なんだと意識する。

 私を気遣うような優しい走り方、「落ちんなよ」といたずらに笑う横顔。
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