好きだと気づく30センチ
 一人きりの空間は私を落ち着かせる。

 この静けさが好きだ…ったはず、なのに。

 “ヒヨコ”

 あいつの声を、顔を、姿を、探してる自分に焦る。

 本棚の向こうに見える扉。そこからクワガタが入って来ないかな、なんて、あるわけないのに。

 席が近くて、朝もたまたま登校する時間が一緒なだけ。

 あいつと買い物に行ったのも女子の意見が聞きたかっただけで私じゃなくても良かったかもしれない。

 自転車の後ろに乗せてくれたのも、私が歩いて帰るのを不便に思っただけ。

 ……あいつにとって、私は、特別じゃない。

 私だって、一番最初に友達なってくれた、ていうだけにしか思ってない。

 そんな“ただの友達”のことで頭がいっぱいになる。
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