好きだと気づく30センチ
通学路で
 暖かい陽射し、自転車で走る私の髪をもてあそぶ風。

 学校へと向かう道は、まだ早い時間だからか生徒の姿はほとんどない。

 すれ違うのも、犬の散歩をする人や幼稚園に通う子供を送るお母さん。

 清々しい気持ちで自転車をゆっくり走らせる。

 そんな素敵な朝…なのに。

「ヒヨコ」

 眠そうな、まるで欠伸をしながら呼んだような声に振り返ると、クワガタが変な寝癖を風になびかせて隣に居た。

「変な呼び方しないで」

「…やっぱ怒ってんの?」

「そう思うなら、そうなんじゃない?」
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