魔王と猫女
椿、生まれてこのかた16年、初めての「美味しそう」頂きましたー。
わーい(白目)。
「・・・ウサギってネコ食べんの?」
「まさか」
ですよねー。普通逆っすよね。あ、あれか。「食べちゃいたいほどかわいいね。」ってことか!
なるほど。
椿が一人で納得していると、糸目からとんでもない発言が飛んできた。
「俺、ウサギじゃないよ。どっちかというと肉食動物だし。」
「・・・・あ、そーなんだ。」
じゃあアンタの頭上に乗ってるそれはどう説明がつくんですかねえ!!
取れんのか!?実は被り物か!?つか肉食動物ってなに!?え、ライオンか何かですか!?
・・・つかマジで食べる気?・・・・まさかねえ・・・。
とか頭の中は大混乱だが、表では「ハハハ」とひきつった笑いしかでない。
なにこれ、なんかヤバいフラグ立ってねえ?私今すぐここからダッシュした方が良い感じかな?
けど、背後は湖。糸目の後ろは森。
しかもこの森、なんかヤバい。何がどうとか言えないけどヤバい。
とにかく黒いのだ。木が、森を包む空気が。
それこそが、椿が湖の前で立ち尽くしていた理由だった。
でも、そうも言ってられそうにない。
気のせいかもしれないが、相変わらず笑顔の糸目の目が怪しく光っている気がする(細くて分かりにくいが)。
「ねえ。」
静かに椿の動揺する姿を見守っていた糸目が、一歩椿に近づく。
椿は一瞬ビクッと体を震わせたものの、すぐにファイテイングポーズをとった。
糸目は腰に剣をさしている。ポーズはとったものの、椿は逃げる気満々である。
「何だよ。」
「やだなあ、そんなに警戒しないでよ。ちょっとお願いがあるだけなんだ。」
ちょっと味見させて、とかじゃないだろうな。
「何。」
「太ももの付け根見せて。」
そう言って、糸目が一歩近づいた時だった。
バシャンッ
椿は後ろ向きのまま、勢いよく地面を蹴って湖に飛び込んだ。