追いかけっこが、終わるまで。
みんなの分もまとめて2人で飲み物を抱えて戻り、食べて飲んで、ボロが出ないようにおとなしく聞き役に回って過ごした。

先輩は途中、同期らしい女の子グループに呼ばれて行った後、男女数人を連れて帰ってきた。

どこに行っても、年を取っても、自然に人に囲まれる性質は変わらないんだろう。

そんなこと思っている場合じゃないのに、やっぱり先輩が昔のままかっこよくて嬉しくなる。



ひとしきり食べた後はスポーツ大会になるらしい。

飲み続けたい人たちを置いて、若者を中心に移動していく。

「弓道じゃないけど、アーチェリーやるってさ。やってみる?」

と先輩が声をかけてくれた。




移動中に、先輩が速人くんを呼んだ。

「速人、今日車貸して」

「え?なんで。片付けとか色々あるんだよ、無理だろ」

「俺、この子とちょっと話あるんだよね。家に連れ込むわけにも行かないし、車があると助かる」

「しょうがねーな。明日うちまで返しにこいよ?」

「わかった。さんきゅ」



相変わらずだ、ワガママだ、自由だ、長谷川先輩だ。

憧れたのは、こういうところだったんだなと、今更思い出してついにやける。




あの頃、高校生活は楽しくて仕方なかったけど。

同時に周りに上手に合わせて浮かないようにすることに疲れてもいた私は、この愛される自由さに触れる度、癒されてたんだ。

優しくて、いつも周りに気を配ってくれて、私を傷つけそうなもの全部から守ってくれようとした元彼の春樹の腕の中では、だんだん息ができなくなっていったのに。



ばかだなあ、私。

こんな風に、どこまでもワガママになれればよかった。春樹にも。




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