追いかけっこが、終わるまで。
7時過ぎ。お店に入るとこの前と同じボックス席に3人がいた。光輝くんとすぐに目が合った。あの時みたいだ。今回は目が笑っている。
私も笑顔で応えて、空いている彼の隣に座りながら、仲良く並んだ美和と速人くんにも挨拶する。
仲良くっていうかねえ。美和は私の慰労会と言いつつ、元彼の速人くんに会うのも目的なんだろうと思う。バーベキューの時と一緒で、私と光輝くんの仲をだしにしてるんだよね、いいけど。
そうだ、光輝くんは、この2人に私のことを何か話したのかな。右隣を、今更強烈に意識する。
「リサ、お疲れー」
「じゃ、改めてカンパーイ」
陽気な目の前の2人組の音頭で乾杯した。お似合いだよ、美和。心の中でつぶやく。
「疲れてるんじゃないの、飲んだらまた潰れない?」
光輝くんがさりげなく突っ込む。またって何よ。前だって別に潰れてないよ。
ちょっと横目で睨みをきかせてから、帰りの車で寝てきちゃったから大丈夫、と前を向いたまま苦笑で返す。
ええ木島さんの運転で?さすがリサ、大物!と大声で笑った美和の声で消されそうに小さく、それは残念、と笑いを含んだ声が隣から聞こえた。
ちょっとやめてほしい、隣に目を向けられない。
「美和もたいへんだったでしょ、今週は。全然会えなかったけど」
美和に話を振って、聞こえなかったふりをした。
そのまま2時間弱、他愛ない話で盛り上がり、私は解放感も手伝っていつもより多少速いペースで飲んだ。
「リサちゃんも疲れてるだろうし、そろそろ帰るか」
速人くんの言葉に、まだまだゆっくりするのかなと思っていた私はちょっとびっくりしたのに、あとの2人はそうだねと早速立ち上がる。
慌てて私も立ち上がりかけて、身体がふらっと揺れた。
「やっぱり酔ってるじゃん」
腕を支えながら耳元でつぶやかれてドキッとする。確かに。この程度で酔うなんて、疲れてるからか。
「ちゃんとリサちゃん送ってけよ。襲うなよ」
「わかってるよ、うるせーな。お前はそろそろ襲っとけよ」
店の外に出たところで男の子っぽいくだけた会話が聞こえた後、肩を抱かれた。リサ、マジで酔ってんの?歩ける?耳元で光輝くんの声がする。
ダメだ、ドキドキし過ぎて心臓に悪い。
酔ってるけど、いい気分、大丈夫。答えてからほんとに、楽しい気分だと気づく。
「ねえ、あっちの駅まで歩こうよ」
肩に回された腕からあえて抜け出して、1番近い駅とは反対方向へ、その腕を引っ張った。都内有数の大きな公園を抜ければ、もう1つ先の駅までそんなに遠くない。
「もう公園の門しまってるぞ、酔っ払い」
言いながらも手をつないで、歩いてくれる。
楽しくて、嬉しくて、笑いながら歩いた。ずっと何か話していた気がするけど、何の話かかけらも覚えてない。夜の空気がただ心地よく、彼の隣がただ心地よく、ひたすら歩いた秋の夜道だった。
私も笑顔で応えて、空いている彼の隣に座りながら、仲良く並んだ美和と速人くんにも挨拶する。
仲良くっていうかねえ。美和は私の慰労会と言いつつ、元彼の速人くんに会うのも目的なんだろうと思う。バーベキューの時と一緒で、私と光輝くんの仲をだしにしてるんだよね、いいけど。
そうだ、光輝くんは、この2人に私のことを何か話したのかな。右隣を、今更強烈に意識する。
「リサ、お疲れー」
「じゃ、改めてカンパーイ」
陽気な目の前の2人組の音頭で乾杯した。お似合いだよ、美和。心の中でつぶやく。
「疲れてるんじゃないの、飲んだらまた潰れない?」
光輝くんがさりげなく突っ込む。またって何よ。前だって別に潰れてないよ。
ちょっと横目で睨みをきかせてから、帰りの車で寝てきちゃったから大丈夫、と前を向いたまま苦笑で返す。
ええ木島さんの運転で?さすがリサ、大物!と大声で笑った美和の声で消されそうに小さく、それは残念、と笑いを含んだ声が隣から聞こえた。
ちょっとやめてほしい、隣に目を向けられない。
「美和もたいへんだったでしょ、今週は。全然会えなかったけど」
美和に話を振って、聞こえなかったふりをした。
そのまま2時間弱、他愛ない話で盛り上がり、私は解放感も手伝っていつもより多少速いペースで飲んだ。
「リサちゃんも疲れてるだろうし、そろそろ帰るか」
速人くんの言葉に、まだまだゆっくりするのかなと思っていた私はちょっとびっくりしたのに、あとの2人はそうだねと早速立ち上がる。
慌てて私も立ち上がりかけて、身体がふらっと揺れた。
「やっぱり酔ってるじゃん」
腕を支えながら耳元でつぶやかれてドキッとする。確かに。この程度で酔うなんて、疲れてるからか。
「ちゃんとリサちゃん送ってけよ。襲うなよ」
「わかってるよ、うるせーな。お前はそろそろ襲っとけよ」
店の外に出たところで男の子っぽいくだけた会話が聞こえた後、肩を抱かれた。リサ、マジで酔ってんの?歩ける?耳元で光輝くんの声がする。
ダメだ、ドキドキし過ぎて心臓に悪い。
酔ってるけど、いい気分、大丈夫。答えてからほんとに、楽しい気分だと気づく。
「ねえ、あっちの駅まで歩こうよ」
肩に回された腕からあえて抜け出して、1番近い駅とは反対方向へ、その腕を引っ張った。都内有数の大きな公園を抜ければ、もう1つ先の駅までそんなに遠くない。
「もう公園の門しまってるぞ、酔っ払い」
言いながらも手をつないで、歩いてくれる。
楽しくて、嬉しくて、笑いながら歩いた。ずっと何か話していた気がするけど、何の話かかけらも覚えてない。夜の空気がただ心地よく、彼の隣がただ心地よく、ひたすら歩いた秋の夜道だった。