追いかけっこが、終わるまで。
「ああ、なんだ、そういうこと」

美和がわけ知り顔でニヤリとする。

そういうことってどういうことよ。

恋愛経験豊富な美和に比べたら、どうせ私はわかってないですよ。



「リサは、光輝くんが好きなのね?」

きっぱり言われて顔が赤くなる。

「で、身体の関係が先になっちゃったから、遊ばれてるんじゃないかと不安になってるわけね?」



「遊ばれてると思ってるわけじゃないの。そういう人じゃないのはわかる。でも、私が逃げたから追いかけたくなっただけかと思う。本気で遊んでるっていうか。

追いかけっこで捕まえたら、もう満足かもとか」

早口で言いながら、そうだそれが怖いんだと気づく。

あの楽しげで自由な眼差しは、きっと私を通り越して、また別の楽しみを見つけに行く気がする。

先輩だった自分に憧れてた子を、今の自分に向けさせて、そしたらきっと満足しそう。



だって、光輝くんが私を好きでいる理由がない。

黙って先輩を利用した子。押されたら流されちゃう子。酔うと記憶をなくして喋りまくる子。

そんな子を本気で好きになったりしないでしょ、ああいう人は。
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