追いかけっこが、終わるまで。
6.春樹
水曜日、光輝くんからメッセージが来た。

【金曜会える?】

初めて誘われた!

でも用件だけにもほどがある。会えます。って返してやろうかと一瞬思って、もちろん考え直す。

【7時頃には上がれる予定。光輝くんは?】

【同じくらいで平気。うち来る?】

素早く来た返信を確認して固まる。うちって、そういうことだよね、どうしよう。いいよって軽く答えればいいの?

【話したいことがある。】

間が空いたからか、光輝くんから重ねて送られてきた。

【いいよ、駅に着いたら連絡するね。】

急いで返して、ダメ押しでスタンプを送る。今日はこれ以上の対応は無理。




話したいこと?美和がなんか言ったの?美和にぺらぺら喋ったことがばれて怒ってるとか?

あんな風に逃げられたことを、みんなにはやっぱり知られたくなかったかもしれない。



考えても仕方ない。悪い話じゃないかもしれないし。




くせになってるネガティヴ思考を封印して、気分転換に軽い模様替えをすることにした。

お気に入りのファブリックを組み合わせたベッド周りを、秋冬仕様に入れ替える。

南仏の青ベースだった夏っぽい布地を全部外して、茶系と赤系に入れ替えていく。

ベッド脇は、自分で塗った薄紫のアクセントウォール。

このままでもいいけどペールピンクに塗り替えようかなと想像しながら、恋愛脳になっている自分に苦笑いする。

ピンクを使ったことないな、この部屋で。

短大2年目から、もう3年以上になる部屋だけど。春樹がいつも泊まりに来ていた部屋だけど。
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