追いかけっこが、終わるまで。



終わった後、疲れたのか眠ってしまった先輩の横顔を見ていた。

眠っているところなんて初めて見たなぁ。かわいい。

眼福です。



床に散らばった服を集めて身につけて、先輩のスーツはハンガーに掛け、下着や靴下はまとめてベッドサイドに置く。



急がなきゃ、先輩が目を覚ます前に行かなくちゃ。

私が弓道部の後輩だなんて、そして長谷川ファンクラブ会員だなんてうっかり気づかれてしまったら、自分勝手に先輩を利用したことがばれてしまう。

それに、こういう一夜限りの関係なんて初めてで。

朝になってどういう風にふるまうのが正解なのかも、経験値の低い私にはわからないし。

だったらきっと。

朝になったらいなかったぐらいのほうが、先輩も気を遣わないよね。



眠っている先輩の瞼にそうっと口づけて、部屋の入口で振り返り、弓道場に向かってするように一礼した。




さようなら、長谷川先輩。

ありがとうございました。

きっとまた、誰かと恋ができるような気がしてきました。


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