追いかけっこが、終わるまで。
ここまでは、でも、表向きの話。

短大卒で先に専門職として働いていた私と、就活でつまづいていた彼とが仕事の話ですれ違ったんだと、私達はどちらも高校の友人にそう話している。



でも、一番大きな理由はそれではなかったと、きっと春樹も思ってる。



一人暮らしの私の部屋に頻繁に泊まりに来ていた春樹は、だんだん泊まらず帰るようになっていた。

私が仕事で忙しい。彼が就活で忙しい。

そういう言い訳をお互いにしていたけど、本当は、私が春樹の愛情に応えられなくなっていったのが原因。



嫌いになったわけじゃない。でも、触れられる時間が、苦痛になった。

私を悦ばそうとする彼の意図を感じると、期待に応えなくてはならない気がしてプレッシャーになった。

リサがいいようにしたいからと何度も言ってくれたけど、優しくされるほどに身体は固くなり、最後には泊まりになる状況を避けるようになった。

彼が私のためにと気遣うほど、私は自分がわからなくなった。



今から思えば、身体の相性だけでなく、私達は全部そうだったのかもしれない。

春樹が私の希望を優先する度、私の息苦しさは増していった。

表面的なワガママは、あえて言ってみたりしていた。

でも、本当に伝えたいことは無意識に深く溜め込んで、就活をきっかけに爆発したんだ。



春樹はどうしたいのよ、って。



ごめんね、春樹。

人のことを思いやりすぎる春樹の気持ちをわかってくれる素敵な人と、幸せになっててくれることを願ってる。

そう思うのも勝手なのかもしれないけど。

< 40 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop