追いかけっこが、終わるまで。
7.金曜日
7時には終わると言いながら、実際にはもっと早く仕事を片付けて、オフィスを出る前に化粧直しをした。

だんだん緊張してきた。

美和には、光輝くんに話があるって言われたのと伝えた。いい話じゃなかったら慰めてね、と言うと、心配してないよ、ノロケ待ってるよ、と笑われた。



【7時半に駅に着きます。】

と連絡すると、少し遅れたからどこかに入って待ってて、と返ってきた。

駅前の本屋さんをフラフラして時間を潰すことにする。



何読んでるの、と突然覗き込まれてびっくりしてのけぞる。驚きすぎだろ、と爆笑された。

スーツ姿の大人のくせに、子どもみたいな素の笑い顔。



海外インテリアの本に集中していて、どこで何をしているのか一瞬忘れていたからだ。こういうの好きなの?と聞かれる。

「部屋の壁を塗り替えたいと思って。色を考えてるの」

「自分で塗るんだ?」

「一応ヨーロッパかぶれですから」

「賃貸だろ?」

「引っ越したらどうせ壁紙剥がすからいいよって、大家さんに言われてる」

「どんなのにしたいの?」

「うーん」

ピンクって言いたくないなぁ。



「光輝くんの部屋だったら、テレビの後ろの壁に色があったら綺麗そうだね」

これから行く部屋を思い出しながら、矛先を変えてみる。

「そう?どんな色?」

「黄色、かな」

「…想像できねえ」

「なんかすごい色想像してるでしょ?その色じゃないよ」

色名とか色彩心理とかの話を2人でしながら、お店を出た。やっぱり詳しいんだ、デザイン系だもんね。
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