追いかけっこが、終わるまで。
会社の皆さんに配ったお菓子とは別に、美和にはランチでお土産を渡して、楽しかったよ、と報告した。
「でもなんかすごいよね、急に休めるとか。旅行とか。高校の時もそうだったんだけど、自由な人だなと思って」
「それ、本気で言ってる?リサのために相当頑張ったって聞こえるけど」
美和がため息をついて首をかしげる。
「え?そう?」
「春樹くんの時は、自分に合わせてくれるのが嫌になったって言ってたのにね」
「そうだけど。そんな話美和にした?」
「聞いたよ。酔っ払ってくだ巻いてたときかな」
そうか。何かいろいろ話したって前に言ってたよね。
飲みすぎることなんてめったにないはずなのに、どうしてみんなそういうときの話はよく覚えているんだろう。
私自身はほとんど思い出せないのに。
「光輝くんも相当合わせてると思うよ。行き先だってリサの希望でしょ」
「そうかな。もしかして、無理してるとかあるのかな」
確かに思い返してみれば、私が休める日に、私が言い出した場所に行ってるかも。
でも楽しそうだし、好き勝手されてる感覚もある。美和に言われるまで、合わせてもらってる自覚がなかった。
「まぁ、好きにやってる感じもあるよね。リサはああいうやんちゃな感じがいいのかぁ。もっと落ち着いた人が合うかと思ってた。
速人とかちょっと気に入るかもと思ってたんだけど」
速人くん???私が?
美和ってほんとに速人くんが好きなんだよね。みんなが彼を好きになっちゃうんじゃないのと思ってるんだ。恋する乙女だなぁ。