追いかけっこが、終わるまで。


美和に言われたことを、光輝くんにも報告した。私ばっかり楽しくて、また相手を傷つけてるなんてことがもしあったら困る。

私に合わせてる?無理とかしてないよね?

「してるように見える?」

「見えない」

「じゃあいいだろ」

「気づかないだけかもしれないし」

「リサが気づかなくって、俺が気にしないんだったら、同じだよ」

難なく言いくるめられる。それでいいのかな。

でも、こうやって直接聞けるだけでもいいか。

疑問に思ったことや、して欲しいことを、言葉にしていこうって、私今回はそう思っている。

あまり考えなくても気軽に聞ける雰囲気を、光輝くんが作ってくれてるからだけど。



「それより、リサは暗示にかかりやすい。押しに弱いというか。俺はそれがちょっと心配。俺にしても、美和ちゃんにしても」

「私?そんなことない。二人とも特別だもん。他の人に言われたって気にしないよ?」

「そうか、俺のライバル美和ちゃんか」

「そうかも」

「手強いな、あれ」

「でしょ」

笑って答える。私を先に知っていたことを言い当てられて以来、光輝くんは美和をある意味怖がっている。おかしい。



「でもリサは、俺といるのが一番幸せ。もう逃げられない。わかった?」

「うん」

「ほら、また信じたろ。ちょろいよな」

「前に付き合うなら美和がいいって言ったら、そういう趣味ないって断られてるから、心配しなくても大丈夫だよ」

思い出して言うと、どういう会話なんだよそれ、と本気で嫌そうな顔をした。



違う違う、本当に付き合うとかじゃないの。美和には好きな人もいるんだから。

「美和と速人くん、いつのまにか付き合ってるみたいだよね。またみんなで飲みに行きたいね」

「いいけど。飲みすぎるなよ」

いじわるそうに笑いながら言われた。おかしい。すっかり酒癖悪いキャラになっている。あれは疲れてて、本当にたまたまなのに。



ああ、話の行き先を間違えたかな。

違う話にしよう。

「あとね、香にしばらく振りに会う約束があるんだけど。光輝くんのことって話してもいい?」

「よねこか。見てみたいな。帰りにでも呼んでくれたら迎えに行くよ。顔見せたら手っ取り早いだろ」

え。長谷川先輩が急に現れたりしたら、香が驚きすぎて倒れちゃうんじゃないかな。

でもいいか、私もそれ見てみたいかも。香っていつも隙がないからたまには反撃したい。
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