追いかけっこが、終わるまで。

「リサもそうだったけど、1回だけ抱いてほしいって前にもあったんだけど」

付き合い始めて1か月。彼の部屋のベランダで夜空を見上げていたら、何気なく言われた。

「あれってなんの意味があるの?」

聞かれて言葉を失う。意味って言われても。好きってことじゃないの。

「要は身体目当てってことだろ。俺そんなすごい身体してないし、だいたい1回で評価されるってプレッシャーだし、なんなんだと思うんだけど」

何それ。私って身体目当てでってことになってるの?
え、でもそういうこと?
ある意味そうかもしれないけど、ひどい言われようじゃない?




「光輝くんだって、1回だけでいい時もあるんでしょう」

反撃だ。慣れてそうだし、モテそうだし。

「俺はそんなのないよ」

しれっと言われた。

「やってみて無理とか思ったことないし、相手のことがよくわかってからのほうが色々できるし。新しもの好きな奴もいるけどね、確かに。俺は違うかな」

「そうなの?」

「なんだよ」

「だって初対面でいきなりだもん。そういうことに慣れてると思った。それに、お互い様だって言ってた」

「お互い様?」

「 バーベキューで。飲み物取りに行った時にごめんなさいって謝ったら、お互い様だからいいよって」

「それあれだ、俺もリサのこと知ってたってことだろ。俺は、この子も1回だけってやつか参ったなと思ってたんだからさ、そこはお互い様じゃない」

心外だという顔で言う。
< 56 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop