追いかけっこが、終わるまで。
「あ、うん。大丈夫。でももうばれちゃった。長谷川先輩だよって」
リサに電話が来たと思ったら、すぐに先輩がやってきた。
きゃー、本物だ。会社帰りか、スーツ着てる。うっわー、かっこいい。
「うわー、本物ですね。こんばんは。はじめまして、ですよね。米沢香です」
「よねこ、だよね?」
その笑顔で、その変なあだ名口にするのやめてください!
「ちょっと、リサ、私のことってそういう話?」
「いや、俺その名前だけちょっと覚えててさ。驚かそうって思ってたのになぁ。つまんねぇ。何で先にしゃべっちゃったんだよ」
あー!!この子供みたいなすねっぷり。
本物だよー!!
「だってね、香がね、すぐに当てちゃったの」
「当てるって?」
「長谷川先輩みたいなタイプ?って聞いたら固まったんですよ、この子。で、本人?って聞いたら絶句したので」
一応説明してみる。長谷川先輩と普通にしゃべってるよ、私。嬉しい。
でも何か変なものでも見る顔で目を細めている。先輩、彼女の友達にその顔失礼です。
「なんかさぁ、リサの友達ってみんなすごすぎるよな、推理力が」
「リサはわかりやすいからですよ」
「わかりやすい、か」
なんだか微妙な顔をしている。どんな表情でもかっこいいからいいけど。
長谷川先輩がリサの彼氏か。いいなーこの立場、役得。
「でも美和が当てたのは、光輝くんのほうだよね」
「俺はリサみたいには顔に出ないはずなんだけど」
きゃー、光輝くんって呼んでる!ありえない!
それにしても、2人並んでると予想通りなんか似合う。しっくりくる。
「先輩、杏奈さんから言われてませんか?女の子紹介するって」
「杏奈ちゃん?笹岡の彼女の?ああ、笹岡に言われたな。彼女できたって断ったけど」
「それ、相手リサでした」
「え!」
2人の声が重なった。やっぱりお似合いで笑える。
「同じタイミングで他で会ってたのかぁ。運命だね、リサ」
しみじみと嬉しく思って言う。リサには似合うわ、運命的な出会いとか。弓道部つながりで今更紹介なんてつまんないけど、別方面でも出会うなんてね。
「紹介って、なんで?」
「杏奈さんに、先輩フリーだよって聞いたので。先輩はリサのこと覚えてないでしょうけど、会えばきっと気に入ると思って」
「なんで?」
なかなか切り込んできますね、先輩。勘ですよ、勘。
「なんだろう、雰囲気が似てるから?」
「どこが?」「どこが?」
はい、また2人で同時に反応ありがとう。
「なんだか天然なところが。言われません?」
「言われなくもない。気に入らないけどな、それ」
またふてくされてる。長谷川先輩まつりだな、杏奈さんに自慢しよう。