追いかけっこが、終わるまで。
と思ったら、先輩は急ににやりと笑った。
「じゃ、あの時逃げきられても、また笹岡経由で捕まえられたってことだな」
「やめてよ」
隣を覗き込んで偉そうに先輩が言って、リサが赤くなる。
「何、リサ、逃げたの?」
「ひでえんだよ、やり逃げだよ」
「光輝くん!言わないで!」
真っ赤になってリサが叫ぶ。
うっわー。リサが。このリサが。何があったのよ、あとで問い詰めよう。
「でも、逃げられるって、すごいかも。リサは、割とフリーズしちゃうから。逃げ出せるくらいの相手のほうがうまくいくと思います」
「フリーズね。確かに押しには弱いよな」
「そうなんですよ。でも檻に入れとくとおとなしくなっちゃうタイプなんで、放し飼いがお勧めです」
とりあえずフォローして置こう。でもほんとに。リサは妙に従順なところがあるから、変な男に捕まるのが心配だったんだ。
「面白いなぁ、香ちゃん。リサと仲いいのわかるな」
「今日は香を驚かそうと思ったのに。逆に驚かされちゃったね」
リサが長谷川先輩にふふっと笑いかける。前よりもっとかわいくなった。幸せそうだ。
十分驚いたよ。言わないけど。
リサは、もう大丈夫。私も自分の心配しないと。仕事も恋もこれからだもんね、こっちは。
「先輩、リサをよろしくお願いします」
「わかった。放牧しとくよ」
にこっと笑った。これだよね、この笑顔にみんなやられたよね、健在だ。
結婚しそうだな、この2人。わかんないけど。こっちの勘も当たるかもね。
末永く、お幸せにね、リサ。