nine hundred Lies【暗詩】
#073 心の中の仔犬
土砂降りの雨の中
仔犬は誰かを待っていた
差しのべられた手を
振り払っても
待っていたい誰かがいたから
びしょ濡れで
みすぼらしい姿でも
構わず誰かを待っていた
濡れたダンボールに意味なんかなくなっても
その場所から動こうとはしなかった
あの仔犬は知っていたんだ
待つことをやめたら
捨てられたことを
認めたことになる
だからずっと待っている
僕の心の片隅で
今でもまだ
待ち続けているんだろうか
閉ざした心の片隅で……
【#073 心の中の仔犬】