さいごの夢まで、よろこんで。
「沙耶は髪切らないの?ずっとそれぐらいの長さだよね」
「えー、くくれたほうが楽じゃない?寝癖も長いほうがつきにくいし」
「乾くの早いほうが楽だって!」
こういう何気ない話を、ずっとしていけたらいいな、夏子とは。
翔太といるときとは、また違った安心感がある気がして。私はすっかりそれに甘えてしまっているわけだけど、それでもいいよって言ってくれてるように思えるほどの包容力というか、まあ言い方を変えればお姉ちゃんみたいな感じで。
「ねえ、もっとさあ、この際ノロケとか聞かせてよ」
「はあ?無理無理!そんなの無い!」
「嘘つき!」
つまり、なんていうか、私は夏子が大好きだった。
その日の夜、翔太に電話をかけた。
「あ、もしもし?起きてた?……え、うそごめん!」
電話越しに聞こえる、ちょっと怒ったような声に、思わずふふっと笑いが溢れた。
「ごめんってば。……うん、うん。あのね、来週は、映画館に行きたい」