さいごの夢まで、よろこんで。

翔太が赤城くんと仲がいいのは、正直ちょっと意外だった。
もちろん、いくら私でも翔太のすべてを知ってるわけじゃないから、意外なだけで疑問には思わない。でも学生のときに、そこまであの二人が一緒にいた記憶がないのだ。
もしかしたら、家に来るぐらい仲良くなったのは、最近なのかもしれないと思った。

「んじゃ行くか。映画館だったっけ?」
「そう!このまえ夏子も行ったんだって!」
「夏子って……ああ、あのケバい」
「翔太!」

翔太はラブストーリーには興味ないかもしれない。もしかしたら、夏子の彼氏みたいに爆睡しちゃうかもな、とこっそり笑った。

相変わらず、翔太は私の隣か、少し後ろを歩く。すっかり定着したこの距離感が、今では心地いい。

「ねえ翔太」
「おー」

振り向くと、翔太はのんびり欠伸をしていた。
幸せだなあ、と思った。
大切な人と、こうやって一つ一つ、思い出を積み重ねていって、どんどん積み重ねて高くして、そしたらそこからまた新しい景色が見えて、それがまた思い出になる。
一つも、無駄な思い出なんてない。

「写真撮ろー!」
「え、今?」
「だってほら、映画館では写真撮っちゃダメだし」

翔太の隣に立って、カメラを構える。

「だからってこんな、いたってフツーの道で…」
「いいの!大事なのは風景じゃなくて、今日、翔太とでかけたってことだから!」

得意げに笑ってみせると、翔太は目を見開いて口を閉ざした。それから、いつもみたいに呆れた顔をした。

先週のおかえしで、今度は私が翔太の腕にくっついて、シャッターを押した。
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