さいごの夢まで、よろこんで。
「うわ、コテコテの恋愛ものかよ」
映画館について、チケットを買った後になって、これから観る映画のパンフレットを翔太に見せた。じゃないと嫌がって他のにされちゃうかもしれないから。
「俺、こういうの苦手だって」
「知ってるよ。たまにはね、翔太も感動するってことを覚えたほうがいいよ」
「人の恋愛もの観ながら、静かに椅子に座ってるの、なんか足がムズムズすんだよなあ」
なにそれ、って笑うと、翔太は困った顔をした。
「……自分のだってまだ何も行動出来てないってのに」
「え、なに?」
「なんでもねー!コーラか?メロンソーダか?」
「メロンソーダ!」
なんだかんだ言いながら、翔太はちゃんと付き合ってくれる。
そのうち愛想つかされたらどうしようかな、なんて。そのときはこっちもあの冷めた態度に愛想つかしてやろう。
肝心の映画のストーリーは、ものすごく良かった。
幼い頃に離れ離れになってしまった二人が、大人になって再会する。それも、とても泣き虫だった男の子が、立派な男に変身して。
それがまるで王子様みたいで、ヒロインの切ない気持ちとか、嬉しい気持ちが伝わってきて、胸がぎゅっとなった。
「うぅっ……」
「……何泣いてんだよ」
「か、かんどうして……っ」
思いっきり感情移入してしまって、こらえきれずに泣いてしまった私の隣で、翔太は得意の呆れ顔。めんどくせえとか、思われてるんだろうなあ。
と思ったら、急に手をつかまれて、そのまま肘掛けの上に乗せられた。
「えっと…?」
「泣き止むまで、つないどく」
そう言って、ぎゅっと手をつないだまま、翔太はスクリーンへと視線を戻した。