さいごの夢まで、よろこんで。
「あれで一気に涙とまっちゃった。それなのに最後までつないだままだったし!」
翔太は、横を向いて、私の話を聞いてるのか聞いてないのか、窓を伝う雨粒を追いかけているように見える。
私が頼んだ甘いカフェオレと、黒いコーヒーの不釣り合いさが、そのまんま私達の温度差のように思えた。
「翔太があんなことするの珍しいよね。やっぱり学生のときより、慰めかたも男らしくなったのかな、って……」
そこまで言って、言葉が続かなかった。とまってしまった。
さっきまで外を見ていた翔太が、真剣な顔で、じっと私のほうを見てたから。
それは、長い間ずっと友達だった翔太が、まだ私に見せたことのない表情のように思えた。私の知らない、初めての翔太だった。
「あ、……えっと」
「……やんだな」
「え?」
「雨」
つられて窓の外を見ると、たしかに雨はやんで雲が切れていた。
今のうちに帰ることにした私達は、カフェを出て、来るときに写真を撮った道を通って、隣に並んで帰路についた。
翔太って、微糖のコーヒーみたいだ。
甘いって言う人もいるし、苦いって言う人もいる。そのどっちも持ってるんだ、きっと。
冷たいと思ったら温かかったり、優しいと思ったら無関心だったりして、振り回されるんだ。
だけど少しの甘さを知ってるから、苦さばっかり感じても安心させられるし、甘ったるくないからしつこくないし、つまり結局、すごいやつだ。
来週はどこに行こう。
私ももうちょっと、振り回してやろうかな。