さいごの夢まで、よろこんで。


「はい、チーズ!」

建物をバックに、ピース。
翔太は一ミリも笑ってはくれなかった。

「……それで?俺を困らせるためにわざわざここを選んだってか」
「まずはあっちのエリアからー!」

次の週に私達がやってきたのは、最大級の大型ショッピングモール。かなり有名なところで、小さな遊園地も併設されている。
週末ということもあり、人で溢れかえったそこに今から飛び込むわけだけど、翔太はげんなりした顔だ。

「こういうところってアレだろ?男はひたすら女の買い物に付き合って、荷物大量に持たされて、しまいにはやっぱりさっきの店で買うから戻るとか言われて、休憩しようにもどこの飲食店も行列、最終くたくたになってやっと帰れたと思ったら、家に着いてからファッションショーにまた付き合わされて……」
「な、なんかごめん、そこまで悪いイメージ持ってると思ってなかった」

もうすでに疲れてそうな翔太に、すごく申し訳ない気持ちになった。
それでも、渋々付き合ってくれることを知ってる。

「一回ぐらい、翔太とこういうとこ来てみたかったんだ。ごめんね」
「………まあ、一回ぐらい、な」

やっぱり。結局優しいから、許してくれるんだよね。
来週はもうちょっと、翔太が好きそうなところにしようと、こっそり思った。

人混みの中、翔太は私の隣か、斜め後ろを歩く。
いつものことだけど、翔太は絶対私を見失わない。特に背が高くもなく、髪型に特徴もない私を、どうしたって見失わないのだ。
だけど、今日はいつもと違った。

「お前、いきなり店にぴゃっと入るからはぐれそうになるんだけど」
「えっ!ごめん」

フロアにお店が並ぶこういうところでは、簡単にお店に入れるし、簡単に姿が見えなくなってしまう。

「だからさ」
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