さいごの夢まで、よろこんで。
時計を買った翔太は、ご満悦なご様子。
珍しいこともあるもんだと、少しだけ不思議に思った。
お店に入ると離された手は、お店を出るとまた、自然につながれた。
「これ可愛い」
白いワンピースを手に取って、鏡の前に立って体に当ててみる。
何気なく入ったお店で、今日一番欲しいと思えるワンピースを見つけた。
「着てみたら」
翔太がそう言うので、店員に声をかけて試着してみることにした。
試着室に入って、白いワンピースに身を包むと、女子っぽい気がして気分が上がった。
試着室から顔を出してみると、翔太はすぐそばのイスに座って待っていてくれた。どうせならと、感想をきくことにする。
「翔太、どう」
声に気付いて翔太がこっちを見た。
そしたら、驚いたことに翔太はふっと笑った。
「いいんじゃねーの」
「えっ、そ、そうかな!」
「うん」
まさか、褒められるとは思ってなかった。油断してた。
途端に恥ずかしくなって、脱ぐ、と一言翔太に声をかけてから、慌てて顔をひっこめた。
今更ながらいうと、翔太の笑顔は、実は結構レアだ。昔からずっとクールだと言われてきた理由も、それが大きい。
なのでいつも、翔太が笑ってくれると、私はかなり嬉しくなってしまう。翔太の笑顔が見られて、幸せだなって思う。
だから、知らない。こんな自分。
こんな、翔太の笑顔を見て、心臓がばくばくしてしまう自分なんて。
思わず胸のあたりをぎゅっとつかんで、しゃがみこむ。
もしかしたら、私は、後戻り出来ない感情を生み出してしまったのかもしれない。