さいごの夢まで、よろこんで。
随分長いこと見て回っていたみたいだ。
ショッピングモールを後にする頃には、日が落ちていた。
「お前、あんだけ見て結局何も買わなかったのか?」
「うん、今日はね。別にいいの」
もともと何も買う気なかったから、とは言えずに、ただ笑いながら翔太の隣を歩いた。
お店に並んだ服を見て、最近いつも思うことがある。
春になったらもう半袖のものがおいてあったり、秋になったらモコモコのアウターが並んでたり。
普通だったら、それを自分が着てるところを想像しながら買うんだろうな。夏になったら、冬になったらこれを着ようって。
まさか、それを自分が着れるのかな、って疑問に思いながら買うなんて、おかしいんだろうな。
「翔太は、いいもの買えてよかったね」
「おー、ここ最近で一番いい買い物した」
横顔が、なんだか嬉しそうだ。
前は感じなかった。
嬉しそうな横顔を見てると、胸を刺すような、締め付けられるような気持ちが、足元から這い上がってくる。
自分では止められなくて、いくつもいくつも胸の中にたまっていくそれは、水たまりみたいに心に巣食って大きくなる。
切なくて、苦しくて、痛い。
「沙耶、来週はどうすんだ?」
当たり前のようにすぐ側から聞こえる声に、戸惑う日が来るなんて。
知らなくてよかったよ、こんな気持ち。知りたくなかったよ。
「あー、来週ね、まだ決めてないから、ちょっと考えてみる!」
家に着くまでずっと、しっかりとつながれた手と手は、まるで”今”にすがりついているみたいだった。