さいごの夢まで、よろこんで。
平日の夜、家のチャイムが鳴って応答すると、思いがけない人物がドアの外に立っていた。
「赤城くん……」
「こんばんは。夜分遅くにすみません」
学校と、翔太の家以外で会うのは初めてだった。
思いっきり動揺したのは、多分バレた。
「ど、どうしたの?あ、どうぞ入って」
「いえ、ちょっと様子を見に来ただけなので、ここで。すぐに帰ります」
そうですか、とつられて敬語でつぶやいた。
相変わらずの、観察されてるみたいな、心を読まれるみたいな視線に、体が強張った。もしこの人に嘘をついたとして、一瞬でバレるんだろうなって、どうでもいいことが頭に浮かんで消えた。
「あまり顔色がよくないですね。体調、よくないですか?」
「かおいろ……」
そっか、顔色よくないのか。
自分ではよくわからない。
「自分でも、いつもと違うとか変に思ったら、いつでも連絡してください。救急車を呼ぶほどのことじゃないと思っても、とりあえず僕を呼んでくれたら駆けつけます」
赤城くんは、翔太と同じように、あんまり笑ったり、表情を変えたりしない。
違うのは、翔太みたいに面倒くさそうで気だるそうな感じじゃなくて、無表情で淡々としてるイメージ。
そんな赤城くんが、私のことを心底心配してくれてるのが、静かな口調からでもよく伝わってきた。
「ありがとう。赤城くん、中学のときからずっと、気にかけてくれてたよね」
「……まあ、あの頃は僕しか知らなかったですから。いざというときに助けられるのも、僕しかいなかったですから」
なんだかそれって、ずっと、ひそかに守られてたみたいだ。
改めて、赤城くんにお礼を言った。
「じゃあ、顔が見れたので帰ります。元気がなさそうなので無理はせずに、なるべく安静にしておいたほうがいいと思いますよ」
「あ、待って」