さいごの夢まで、よろこんで。
そして週末。
家に迎えに行くと、翔太はもう身支度を済ませて待っていた。
「今日、どこ行くか聞いてねえんだけど。どうすんだ?」
「今日はねー、そのときの気分に任せようと思って!」
でたよ、こいつのわがまま。
そんな声が聞こえてきそうな感じで、翔太は眉をひそめた。私は、翔太のそんな表情でさえ、頭の中にしっかりと刻み込んでいく。
「そんなんで、グダグダになっても責任持たないからな」
「だーいじょうぶ。とりあえず、最初に行くとこは決めてあるから!」
「ったく……」
家を出て、隣を歩く。
翔太はさりげなく車道側を歩いて、私の歩幅に合わせてくれる。いつもそうだ。
一緒に道を歩く、たったそれだけの動作の中に、いくつの優しさがあるだろう。私はそれに、いくつ返せてこれただろうか。いくつかは、返せてこれたんだろうか。
ずいぶん長いあいだ一緒に過ごしてきたけれど、翔太にとってのメリットってあったのかな。
翔太にとっての、私、ってなんだろう。
「天気いいなー」
「絶好の楽しみ日和だね!」
「なんだそれ」
ふっと笑いをこぼした横顔に嬉しくなって、私も笑った。
手は、つながなかった。