さいごの夢まで、よろこんで。
カコーンと、爽快な音が響く。
「よっしゃ!」
「すごい!またストライクー!」
100点というすさまじいハンデをもらっていながら、この勝負負けそうだ。
「ボーリングとか久しぶりに来たけど、まだまだ腕は鈍ってないな」
「余裕ぶっこくのはまだ早い!今から本気出す!」
「それ負ける奴の典型的なセリフな」
ボールを抱え、目を閉じて深呼吸を一つ。私の投げたボールによって、ピンが弾かれて舞うシーンを頭に思い描く。
いける。
「とう!」
勢いよく手から放たれたボールは、直線的な軌道でまっすぐピンのもとへ向か……わずに、途中で溝へと導かれた。
「おま、りきみすぎ〜!」
振り返ると、お腹を抱えてゲラゲラ笑う翔太。
「なんで!?なにがそんなに違うの!?」
「いや、お前は今のままでいたほうがいい。上手くなったら面白くない」
「馬鹿にしすぎ!ちょっとぐらいコツとか教えてよー!」
悔しい。
でもまだ、ここからスペアの可能性だってある。
二投目を投げるべく、再びボールを抱える。後ろで笑いをこらえてるような声が聞こえてくるけど、無視無視。
さっきの失敗を修正するように、慎重に投げ始めた。
すると今度は勢いが無さ過ぎたのか、上手く指が抜けずに、一度浮き上がったボールはレーンにガンっと落ちた。
当然スピードもないので、ヘロヘロと再び溝へ。
「ぶはっ!」
「いたーい!今、すごい痛かった!」
指をさすりながらイスへと戻ると、翔太は声にならない声をあげながら、体を折りたたんでいた。
「ひどい!痛がってるのに笑いすぎ!」
「ボールを思いっきり落とされたレーンのほうがよっぽど痛そうだろうが。あーだめだ、どんくせえ」