さいごの夢まで、よろこんで。
「あーあ、もうちょっと早く教えてくれてたら勝てたかもしれないのに」
ボーリング勝負に負けた私は、二人分のアイスを買って、一つを翔太に渡した。
「ちょっと教えたぐらいでお前が俺に勝てるわけねーだろ。100点もハンデあって負けたのに、アイスだけで済んでよかったと思え」
「むっかつく!」
私はバニラ味、翔太はいつもチョコレート味。なにも聞かなくても、一番好きな味はわかる。
公園のベンチに座って、二人並んで食べた。
「んで?次はどうすんだ」
「そうだねー、このままじゃ悔しいから、……」
そう言って次にたどり着いたのは、バッティングセンター。翔太と来るのは初めてだった。
意外と色んな人がいて、見てると面白いのがバッティングセンターだ。
小学生の男の子がいい当たりを連発してるかと思えば、スーツを着た若い人が一心不乱にバットを振り回している。就活生かなにかだろうか。
「お前、一球でも当たんの?」
「前来たとき、わりといい線いってたからね。翔太こそ空振りばっかりとかやめてよね」
軽く肩をまわしてから、バッターボックスに入ってコインを入れた。
翔太は、フェンスの外からこっちを見て腕を組んでいる。なんかちょっとニヤニヤしてるように見えるのは、私の間抜けな姿を期待してるからに違いない。
バットを握って前を見る。視線の先には、モニターに映し出されたピッチャーが構える姿。その手からボールが出てくるところを、しっかりと目で追いかけて。
「ふん!」
タイミングを合わせてバットを振った。