さいごの夢まで、よろこんで。
「似てる!想像してたより似てる!」
「だろ?あとは古典の山口」
翔太はサラサラとチョークを走らせる。それが思いのほか上手くて、忘れかけていた先生達の顔を思い出させてくるのだ。
「斉藤先生とか、好きだったなあ」
「化学のな。けっこう頭うすかったよな、後ろから見たらこんな感じで…」
「あはは!」
学生時代って、なんて馬鹿なことばっかり考えてたんだろう。
当時のことを思い出して、懐かしいやら寂しいやらで、だんだん二人のテンションは上がっていく。
「…それで、体育祭のときの応援団長が鼻血出してさ」
「あったあった!ティッシュ詰めたまま踊ってたー!」
「そしたら勢いよくターンしたときにスポッてとれてた」
「待って待ってお腹いたい!団長さいこー!」
イスに座ってる私の、二つ前の席の机の上に座ってる翔太。あの頃よりずっと背が伸びたんだろうな。
「翔太、応援団に熱烈に勧誘されてたよね」
「意味わかんなかったな、トイレの中まで待ち伏せされてたっての」
「私、女の子達に翔太を説得しろって言われたよ」
「まじかよ!女子こえー!」
目尻にしわを作りながら、心底可笑しそうに翔太は笑った。
笑顔はあの頃と全然変わらないな。ここまで爆笑してるところは、学校ではほとんど見たことなかったけど。
「卒業式のとき、囲まれてたよね、女の子に」
「そうだったか?あんま覚えてねーけどとりあえず、校長の話長かった。オチねえし」
「校長先生にオチを求めてどーすんの!」
卒業しても、同じ高校に通うって決まってたから、悲しくなんてなかったな。