さいごの夢まで、よろこんで。
もうながくないと知ったとき、家族と同じくらい頭の中に浮かんできたのが、翔太の存在だった。
一人ぼっちで、まっくらな人生の中をとぼとぼ歩いていた私に、光を射してくれた翔太。友達になってくれた翔太。
もう会えなくなるなんて、考えたくなかった。
自分がもうすぐこの世からいなくなることを、翔太には言えないでいる。
言ってしまったらきっと、この関係は終わってしまう、そう思った。
なんて自分勝手で、理不尽なことだろうと、何度も罪悪感に押しつぶされそうになった。
それでもどうしても、私は今の翔太という存在を、私がいなくなるそのときまで、失いたくなかったのだ。
だから、まだ私の身体が元気な今のうちに、翔太との思い出を一つでも増やそう。あの世に行っても忘れられないくらい、たくさん胸に刻もう。
週末には翔太と出掛ける。
そんなルールを自分の中に作って、毎週のように翔太を誘った。それを繰り返すうち、今では翔太のほうからも誘ってくれるようになった。
「じゃあ水族館にしよう」
「りょーかい」
何も知らなくていいよ。
知ってる期間はできるだけ短いほうが、ツライ時間は短くなるからね。