さいごの夢まで、よろこんで。


意外なようで、そうでもない人がお見舞いに来てくれた。
この病院の院長先生の息子の、赤城くんだ。

「思ったよりも、元気そうですね」
「うん、まあ。ヒマだけどね」

赤城くんは、配色の綺麗なプリザーブドフラワーを持ってきて、窓際に飾ってくれた。さすがだなと思った。

「僕、頻繁にこの病院に来て研修受けてるので。なにかあれば、いつでも」
「ありがとう。助かる」

病室に二人きり、なにを話せばいいかよくわからなくて、口を閉ざしてしまう。

本当は、翔太のことを聞きたかった。
もう何ヶ月か会っていない。元気なのか、最近はどうしてるのか、少しだけでも知りたかったけど、口に出す勇気がなかった。
赤城くん、翔太から聞いて私のこと最低って思ってるかもしれないし。

すると、意外なことに、赤城くんのほうから話を振ってきた。

「翔太には、連絡しましたか?」
「え……」

びっくりして、一瞬かたまってしまった。まさかそんなこと聞かれると思ってなかったから。
連絡って、なにを?入院したこと?だってそんなの、連絡しちゃったら今までの努力が水の泡だよ。

「あ、あの、知ってるかもしれないけど。私、翔太とはもう連絡取り合ってなくてね?」

赤城くんの表情からは、なにを考えてるのか読み取れない。私が話すのをじっと待っているらしい。

「っていうか、私のほうから、連絡しなくなっちゃったんだけど。ほら、こんな状態になるってわかってたし……」

なんか言い訳してるみたいだよねって、自分で自分に嫌気がさした。
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