さいごの夢まで、よろこんで。


はたして、見捨てられたのはどっちだったのか。

今になって思えば、お互いがお互いに、バレないように必死だったんだろうな。
翔太が私の病気のことを知ってたかさえ、もうわからない。

今までどんな気持ちで、私と一緒にいたんだろうか。
いつまで一緒にいられるのかわからない中で、翔太の出した答えはどんなものだったんだろう。
もし、最後までずっと私といようと思ってくれてたなら、急に私がいなくなったことに対して、どうだっただろう。

きっと私が感じたときよりずっと、見放されたと思っただろう。見捨てられたと思っただろう。
”散々近くにいて、遠慮なく心の中に土足で踏み込んできてたくせに、突然裏切るなんて最低だ”って、思っただろうな。

あのときの、あの頃の、あの日の、……翔太の心情を想像すると、もうなんか、言葉に出来ない。声にならない。
どうして今、自由に動けないんだって、歯がゆくて仕方がない。

どうしてもっと信じられなかったのか、どうしてもっと耳を傾けられなかったのか、どうして離れてしまったのか。
後悔が次から次へと、とまることなく溢れ続ける。


だけどこれは全部、ただの私の想像で。
翔太が本当はなにを思って、なにを考えてたかなんて、実際には私はなにも知らないんだ。

翔太のこと、知ってるようで、全然知らない。

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