さいごの夢まで、よろこんで。
それからしばらく、手をつないで空を見上げた。
「翔太、それなに?首から下げてるの」
「え、あー、見るか?」
翔太の首には、ネックレスみたいなチェーンがかかっていて、その先を服の中に入れている。
「…あ!それって!」
服から出して見せてくれたそれは、いつか翔太が買っていた、あの懐中時計だった。
丸いところをぱかっと開くと、片側は時計。もう片側には……。
「……引くなよ。いつもこうやって持ち歩いてたおかげで、今まで頑張ってこれたんだからな」
恥ずかしそうにそう言った翔太は、ふいっとそっぽを向いてしまった。たぶん顔がちょっと赤い。
「こ、こんなの、いつの間に!?」
「ばかやろう、隠し撮りだ隠し撮り」
「言ってくれたらもっと頑張って可愛くしたのに!」
「わかってねーな!この自然体な感じがいいんだろうが」
こんな風に話してたら、教室で笑い合ったときのことを思い出す。
あのときは、こんな日が来るなんて思ってなかったよ。
「ねえ、翔太」
「おー」
「……また、どこかで会える?」
そう言ったら、握られた手が、さらにぎゅっとされた。
「……今会ってんだろ。馬鹿じゃねえの」
翔太は、いつも通りの口調でそう言った。
そうだよね。
きっと、これで終わりなんかじゃないよね。
そっと、翔太の肩にもたれかかるように寄り添って、確かめるように息をした。
不思議と、もう悲しくなんてなかった。