さいごの夢まで、よろこんで。
あまり友達のいない、寂しい学生生活を送った私にも、数少ない女友達がいた。
話しかけてくれる女の子は多かったけど、ほとんどが翔太と仲良くなりたい子達だった。
翔太くんって、チョコレート好きかなあ?
翔太くんと一緒に帰るの、私にも譲ってよ。
そうやって、私を翔太から引き離そうとする子もいた。
だけどいつも必ず、翔太は私といてくれた。他のどんなに可愛くて美人な女の子よりも、私との時間を一番にしてくれた。
翔太にとってはなんてことないのかもしれないけど、私にとってはそれが、誇らしくて、ほんのちょっと、自信にもなってた。
そんなわけで、女友達という存在は数少ない。その中に、親友と呼べる子が一人だけいる。
「おじゃましまーす」
「あがってあがって!夏子、髪切ったの!?」
「そうなのー。彼氏がね、短いの好きで。あ、これケーキ買ってきた」
それがこの子、夏子。
夏子は、私の病気のことを知っている。余命のことも、話してある。
打ち明けたときは驚いてた。それはもう、こっちがオロオロするくらい号泣しちゃって大変だった。
だけど知る前と同じように、こうして遊んでくれるし、お互いに何でも相談し合えるような関係だった。ただその遊ぶ場所が、夏子が私の家に来てくれることが多くなったってだけで。
「最近はどうなの?体調。変わりない?」
「うん、今はね、なんか調子いいんだ。昨日も水族館行ったの」
そう言うと、ほっとしたような顔をする夏子。
苦しませてる?と聞いたことがある。
いきなり、もう少ししか生きられないんだって友達から言われて、一緒に遊んだり、話聞いてもらったりするのは、夏子にとって負担になってるんじゃないかって思ったから。もしそうなら、もうあんまり会わないほうがいいんじゃないかって、思ったから。
そしたら夏子は怒った。めちゃくちゃ怒った。余命のことを話したときと同じくらい泣きながら、声にならない声で説教してくるもんだから、つられて私もちょっとだけ泣けた。