さいごの夢まで、よろこんで。
「翔太くんは元気?」
「相変わらず、そっけないよ。私と遊ぶのだって、子守してるとでも思ってるんじゃないかな」
ちょっと拗ねたように言うと、夏子はおかしそうに笑った。
普段は大人びてる夏子の笑った顔は、ちょっと幼く見えて可愛いことを知ってる。
「卒業以来会ってないな。あの頃はほんと、沙耶とセットって感じだったよね。あ、今も変わってないか」
「変わってない、かなあ。そうだと嬉しい」
あごラインのボブに切ってある夏子の髪が、笑った拍子にさらさらと流れる。
綺麗な夏子によく似合ってると思った。きっと半年後には、肩につくぐらいに伸びるだろう。もし三年後まで伸ばすなら、別人のようになるだろう。
「彼氏のために切ったんだね、髪。いいよねそういうの!」
「まあ……、ちょうど鬱陶しいと思ってたしね。首がスースーする」
「あはは!順調?喧嘩とかする?」
「するよ!」
聞いて!とばかりに、夏子はテーブルに手をついて眉間にしわを寄せた。
「先週、映画観に行ったの。ほら、沙耶も観たいって言ってたやつ。そしたら隣で爆睡。二人でこれにしようって決めたのに!ラブストーリーだからつまんなかったーとか言われてもうムカついて」
「観たんだ、あの映画!面白かった?」
「私は面白かった!観たほうがいいよ、絶対!それなのにあいつは……!」
どれだけ彼氏にムカついたかが伝わってくる。それなのに、ついニヤニヤしてしまった。だって、デートの話してる夏子、怒りながらも嬉しそうだったから。