にゃおん、と鳴いてみよう

「なんか、ネコの声しなかったか?」

「つかまえたのはぜんぶ保健所行ったんだろ?」

「でも、また戻ってきたかもしれないしな。昨日の苦情聞いたか? ネコの声がうるさいですってヤツ」


なに?
何言ってるの?

ホケンジョって何?

もしかしてあたし、見つかったら捕まっちゃう?


水色の服の男の人が二人、部屋の中へ入ってきた。

間一髪、あたしは入り込んできた隙間から床下に潜り込み、息をひそめた。


「それにしてもすげーゴミの量だったよな」

「ああ、三日もかかったもんな。ここの持ち主、子供に叱られて連れて行かれたらしいぜ」

「半分くらいぼけてたんだろ?」

「そうらしいな。今まで放置しておいてって気もするよな」


ははは、と笑う声が響く。

何言ってるんだろう?

ニンゲンの言葉、少しは分かるんだけど、この人たちの言ってる事は理解できない。

薄暗い床下に、穴の形に照らされる日の光。そこに、ニンゲンの影がちらほら見える。


「……いないみたいだな」

「空耳だったか」

「もう行こうか。これで言われたものは全部運び終えたよな」

「ああ、後はこの家の処分の時に一緒に壊すそうだ」

「あれ、こんなところにパンが落ちてるぜ」


あ、それ、あたしのよ。

そう思ったけど、声を出したらいけないことくらいはあたしにもわかった。
冷たい汗が出できて、喉の奥がひゅーってなる。

そのうちに、声が遠ざかっていく。ブロロロっていう車の音もした。
それもまた、遠ざかる。


居なくなった……?
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