にゃおん、と鳴いてみよう
今度は、妙に静か。飛び上がって家の中に入ったときの、あたしの足音がすごく響く。
さっきと同じ光景。
ううん、違う。パンがない。
ここに置いておいたのに。
さっきのニンゲンたちが持って行っちゃったんだ。
じわり、涙がにじんでくる。
ひどいわ。ママへの、お土産だったのに。
あたし、一生懸命持ってきたのに。
ニンゲンなんか、大嫌い。
思いっきり泣きわめこうかと思った。だけど、またニンゲンが戻ってきたら大変。
それくらいはあたしだって考えられるのよ?
グッと堪えて、もう一度辺りを見回した。
住みなれてたはずの『ゴハン屋敷』は、もう別の場所みたい。
急にここにいるのが怖くなって、もう一度床下に入り込んで、お庭に出ておひさまの光を浴びる。
お庭は、変わらないなぁ。ここでなら、ママを待てるかも。
そう思って、軒下に丸まって待つことにした。
だけどあたしって、あんまり堪え性がないみたい。
どのくらい時間が経ったか分からないけど、じっとしてるのがムズムズする。
すっごく疲れてるんだけど、ママに会うまではやっぱり落ち着けない!
待っているより、探したほうがいいや。
立ちあがって、辺りをきょろきょろ見渡して、駆け出した。
足が痛くって、苦しいけど、ママに会うために頑張らなきゃ。
「にゃぁぁぁ」
全身で叫ぶ。
ねぇ、ママ。チビはここだよ。
この声スキって言ったよね。
いっぱいいっぱい鳴くから、お願いだから出てきてよう。