にゃおん、と鳴いてみよう
 * * *


 気がつけば、あたりは暗くなっていた。


こんなに鳴いてるのに、ママったら全然出てこない。
どこに行っちゃったんだろう。

ねぇ。チビの事、忘れちゃったりしてないよね。

立ち止まって見上げると、お月さまが光ってる。

ねぇ、お月さま。ママを知らない?
ママならきっと、お月さまに向かって鳴いてるはずなのになぁ。

どうしてお月さまとはお話しできないんだろう。
あそこからならきっと、ママだって見つけれるはずなのに。
お姉ちゃんたちだって、きっと見えるはずなのにね。

夜の風があたしの体をどんどん冷やしていく。

寂しいよう。寒いよう。
早く、ママにぴったりくっつきたいよ。

それからまた、歩き出した。とりあえず前へ。あたし、信号の渡り方だってちゃんとわかるんだから。

それにしても、お腹が空いたなぁ。
もうどのくらい歩いたんだろう。

少し前に電信柱がある。
あそこまで頑張ろう。


たどり着くと、なんだか嫌な匂いがした。
どこかのワンコの匂いかな。ここは俺の場所だぞーって言ってるみたい。

分かってるよ、ここはあたしの場所じゃない。

でも、だったらあたしの場所はどこ?

あたし、どこへ行くつもりなんだろう。

そう考えたら、足が止まった。
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