にゃおん、と鳴いてみよう
「うん、良し。綺麗になった!」
ミネちゃんはご満悦であたしをお布団の上に戻した。
そして、慌ただしく「あ、そういえばコーヒー!」なんて言って、バタバタと走っていく。
なんだか、忙しい人ねぇ。
ミネちゃんはあっちへ行ったりこっちへ行ったり、バタバタとお部屋の中を走り回る。そのたびにくるくるとウェーブの髪が揺れた。
あの髪はいいな。じゃれて遊びたくなっちゃう。
「ふう」
戻ってきたミネちゃんは、手にカップを持っていた。白い煙が出てて、そこからお部屋に充満していた匂いが漂っている。
なんだかあたしのこと誘ってるみたい。
さっきミルクも飲んだから、少し元気も出てきたし、ちょっと動いてみようかしら。
ダンボールから飛び出して、丸テーブルに飛び移る。さっきまで体を動かすのもしんどかったのに、ちゃんと飛び移りは成功した。
すごいわ、あたし。
「テーブルにのっちゃダメよー」
手でカップを隠しながら、ミネちゃんが困った顔をする。
どうして隠すのよう。
見せて見せて。
無理矢理近づくと、中には黒い液体が入っていた。
まるであたしの色みたいな黒。あたしの姿が映りこんでいるから、よけいにそう思う。
「これはコーヒーよ。熱いから触っちゃダメ」
『こおひぃ』?
これは『こおひぃ』って言うの?
それからミネちゃんは小さな白いカップをとりだして、プチっと開けた。
白い液体がてできて、『こおひぃ』の中へ入っていく。途端にカップの中には、黒と白と茶色のぶち模様ができた。
わあこれ、ママの色だ!
嬉しくなって、ミネちゃんの顔を見る。
なのにミネちゃんは何にも気付かずに、スプーンでくるりとそれを混ぜちゃった。